天国への扉をたたく者たち

「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」

映画「ヘブンズ・ドア」の原案である「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」は、監督を務めたトーマス・ヤーンがボブ・ディランの同名曲から着想しつくられたロード・ムービーです。1997年にドイツで公開され、日本でも1999年に公開し高い評価を受けた作品です。タクシードライバーとして生計を立てていたトーマスが、本作で主演したティル・シュヴァイガーに脚本を送ったところ、ティルがこの映画の脚本を気に入り、スポンサーを探してくれてのだそうです。また、「ブレードランナー」などで知られるルトガー・ハウアーにどうしても出演してもらいたいと考えていたティルは、ルドガーのマネジメントに掛け合いましたが、1日10万ドルのギャラを要求され、とても払えないと断念。しかし、後にルドガー本人から「マネジメントの言うことは気にするな。出ると決めている」と出演を快諾する返事があり、マフィアのボス・カーチスの役で出演が決まったそうです。ティルはこの映画でモスクワ国際映画祭の最優秀主演男優賞を受賞しました。この映画はティルの出世作ともいえます。

映画好きの方必見!

ストーリー

ひょんなことから病室が一緒になったマーティンとルディ。マーティンは行動的でルディは引っ込み思案と正反対の性格の二人でしたが、マーティンは脳腫瘍を、ルディは骨髄腫を患い、お互いに残された命が少ないという共通点がありました。意気投合した二人は、病室で偶然テキーラを見つけ、病院の調理室に忍び込み酒盛りを始めます。そこでルディは「海を見たことがない」と打ち明けます。マーティンは、「知ってるか?今天国では海の美しさについて語るのが流行ってるんだ。海を見たことがないお前はおいてけぼりにされるぞ」とからかいます。二人はパジャマのまま病院を抜け出し、海を目指すことを決めます。病院の駐車場には、鍵の付いたままのベンツが停めてありました。二人はこれを盗んで逃走します。しかし、その車はなんとマフィアの車で、中には大金が詰まれていたのです。持ち主であるマフィアの下っ端二人組み・ヘンクとアブドゥルは金の運搬中に子供を轢いてしまい、病院に立ち寄っていたところだったのです。ボスにこっぴどく怒られた二人は金とベンツを取り返すべく、マーティンたちを追いかけます。一方その頃マーティンとルディはガソリンスタンドに立ち寄っていました。しかしお金を持ち合わせていないことに気づいたマーティンは強盗して金を奪い逃走します。二人は高級ブティックに買い物に行きますが、ここでもお金が足りず、今度は銀行強盗をするマーティン。無茶ばかりするマーティンをルディは心配し、やりすぎないようにと注意します。犯罪を繰り返していくうちに、テレビのニュースにもなり、警察にも追われる立場となった二人。車に乗っている大金を見つけ、高級ホテルのスイートルームで豪遊していたところに警察がやってきて捕まりそうになりますが、警官の服を奪って何とか逃げることに成功します。しかしそこへ金を取り返しにきたマフィアの二人組みが到着し、警官とマフィアの銃撃戦が始まってしまいます。二人はその隙にうまく逃げ出し夢を叶えるため、再び走り出します。楽しい旅が続くかと思われましたが、天国の扉はすぐそこにまで迫ってきています。マーティンが度々発作を起こすようになったのです。マーティンが発作を起こして苦しむ度に、ルディは駆け寄り薬を飲ませます。二人の絆は確実に強くなっていきます。マーティンの夢はプレスリーが大好きな母親に、ピンクのキャデラックをプレゼントすることでした。久しぶりにあった母親は、キャデラックのプレゼントに「これから頑張って免許取らなくちゃ」と泣いて喜びます。そしてルディの夢は、美女との3P。躊躇うルディの背中を押したのはマーティンでした。死ぬ前に夢を叶えた二人でしたが、風俗店に件のマフィアが乗り込んできます。この風俗店は彼らの経営するものだったのです。拳銃を突きつけられ、ついに捕まってしまう二人。金を返せば命だけは助けてやると脅すマフィアたちに、死期の近い二人は顔を見合わせて笑います。マフィアに金はもうすべて使ってしまったと告げるマーティン。二人を殺そうと銃を突きつけるマフィア。しかしそこへマフィアのボス・カーチスがやってきます。金を使い切ったこと、海を観にいくつもりだったことをカーチスに話す二人。カーチスは二人の話を聞き「時間がないんだろ。早くいけ」と二人を解放します。カーチスは部下たちに諭します。「天国で誰もが話題にするのが海だよ」と。そしてとうとう海にたどり着いたマーティンとルディ。その雄大な姿に二人は無言で立ち尽くします。砂浜に座り込んでタバコをふかしていたマーティンがゆっくりと倒れ、ルディはそっとその横に寄り添うのでした。

キャスト

  • マーチン・ブレスト…ティル・シュヴァイガー
  • ルディ・ウルリツァー…ヤン・ヨーゼフ・リーファース
  • ヘンク…ティエリー・ファン・ヴェルフェーケ
  • アブドゥル…モーリッツ・ブライプトロイ
  • フランキー・“ボーイ”・ベルーガ…フープ・シュターペル
  • シュナイダー…レオナルド・ランジンク
  • ケラー…ラルフ・ケアフォート
  • マーチンの母…コーネリア・フローベス
  • カーチス…ルドガー・ハウアー

スタッフ

  • 監督…トーマス・ヤーン
  • 脚本…トーマス・ヤーン、ティル・シュヴァイガー
  • 製作…ティル・シュヴァイガー、アンドレ・ヘンニッケ、トム・ツィックラー
  • 撮影…ゲーロ・シュテファン
  • 編集…アレクサンダー・ベルナー
  • 音楽…ゼーリッヒ
  • 美術…モニカ・バウアート
  • 衣装…ヘイケ・ヴェーバー
長瀬が好きすぎて生きるのが楽しい!

感想

私の好きな映画べスト10に入るくらい大好きです。「死」がテーマの映画ってどうしても重くなりがちなんですが、この映画は実に爽やかです。見終わったあとすっきりするというか、心が表れるというか。マーチンとルディの掛け合いや、マフィアの下っ端たちの間抜けっぷりがおかしくて、前半は「死」を忘れそうになるんですが、馬鹿にしてるとかふざけてるという感じではなく主人公の二人が自然と死を受け入れているからなんですよね。そしてこの二人の目的は死んだ後、天国での話題に困らないように海を見ておこうという非常にポジティブな考え方から着ています。もし自分が余命宣告されたら…って考えるとなかなかこんな風には捉えられないかなと思います。悲壮感がないラストもとても綺麗です。マーティンが倒れるたびに駆け寄っていたルディが、最後は静かに寄り添うという行動をすることで「死」を描く。涙なくしては見られないシーンですね。カーチス役のルドガー・ハウアーがまたいいですね!本当にちょっとの役だけど、存在感のある「オイシイ」役柄で、ばっちりはまってました。ありがちなストーリーながらも、登場人物ひとりひとりの性格や行動が緻密に練られていて、ユーモア溢れる台詞と流れてくる名曲の数々がマッチしていてとてもいい映画でした。